マーガリンは体に悪い?トランス脂肪酸の危険性について

  • 2019-08-17
  • 2019-08-17
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『よく聞くけど、トランス脂肪酸て何?』

『マーガリンは食べない方がいいと聞くことがあるけど本当?実際どのぐらいヤバいの?』

『食べない方がいいものを、何故日本は制限していないの?』

この記事では、上記のようなトランス脂肪酸に関する疑問に答えます。

トランス脂肪酸の使用について結論:

トランス脂肪酸摂取の可否について、今あるデータから言えることは以下の二点です。

  1. 日本人の平均摂取量(欧米と比較して少ない)における悪影響については証明されていない。
  2. 目くじら立てて徹底排除すべき!とも思えない…そこまで気にしすぎなくてもいいのでは?
  3. とはいえ摂取していいことは何一つないので、減らしたい、あるいは経済的に減らせるならその方がいいです。

自分が脂質消費多めの食生活を送っているという自覚があるのであれば、積極的に摂取を控えた方がいいかもしれません。ただ特に脂質摂取が多くないのであれば、恐らく大きな影響はないのだと思います。

少なくとも体にとっていい影響は知られていないので、積極的に摂るメリットはないと思います。ですが同時に、成分表示とにらめっこをして、親の仇のように徹底的に避ける必要があるのかどうかについては疑問です。

トランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸 (trans-fatty acid) とは、「トランス型の二重結合を有する不飽和脂肪酸」の総称です。

脂肪酸は 多くて20個程度の炭素原子が鎖状に結合し、末端にCOOHの構造を持ちます。その炭素原子同士の結合が殆どは単結合ですが、一部の脂肪酸ではその一部の炭素間結合が二重結合になっているものがあります。

そして二重結合だと、二重結合を挟む2つの炭素原子に結合する水素原子が同じ側に来る場合(シスcis型)と、向かい側、反対側に来る場合 (トランスtrans型) の2通りの構造が成立します(下図参照、農林水産省HPより)。ちなみに両側の炭素原子Cから伸びる何とも結合していない線は、さらに隣のCとの結合に使われます

シス型
Hは二重結合を挟んだCの同じ側(図だと上側)にある
トランス型
Hは二重結合を挟んだCの上下反対側にある。

天然の不飽和脂肪酸は、通常ほぼ全てがシス型で存在します。一方でトランス型脂肪酸は、天然には反芻動物の胃の中に生息する微生物によって作られることがあるぐらいで、殆ど自然界には存在しないそうです。

そして脂肪酸の性質として、飽和度が高い(=二重結合が少ない)ほど凝固点が上がり、室温で固まりやすくなります。

トランス型脂肪酸は工業的に生産される

自然界ではほぼ存在しないトランス型脂肪酸ですが、 マーガリンやショートニングという食用油脂(植物由来でちょっと固い)を工業的に生産(水素付加)する際に生じることが知られています。

植物油脂は常温で液体であることがほとんどです。この植物由来の脂肪酸(二重結合多い)と水素を反応させて、還元反応により二重結合を単結合に変えることで飽和度を上げる技術を水素付加反応、硬化反応といいます。水素付加を受けた脂肪酸は、上に記載したように飽和度の上昇によって固まり、食用として加工しやすくなるという性質を獲得します。この還元反応の際にトランス脂肪酸が生じることが知られています。

その他、植物油脂に対する精製過程においても微量のトランス脂肪酸が産生されるそうです。

トランス脂肪酸は心血管系疾患のリスクを高める

トランス脂肪酸は自然界にはほとんど存在しない構造の脂肪酸です。

その体への影響については複数の研究結果が報告されていますが、いずれの結果を見ても、トランス脂肪酸が身体に対していい影響を持っている、ということはなさそうです。

トランス脂肪酸の摂取は、心血管系疾患のリスク増加につながること。

トランス脂肪酸は、LDL コレステロールを上昇させるだけでなく、HDL コレステロールを減少させるため、飽和脂肪酸よりもアテロームを発生させやすくすること。

トランス脂肪酸が虚血性心疾患のリスクを高めること。

等が検証され、既に学術誌に報告されています。この辺りの影響は間違いなさそうです。

一方で、トランス脂肪酸とがん、アレルギーとの関係については根拠不十分で真偽の程は不明のようです。

まとめ

トランス脂肪酸は可能な限り避けた方がいいと思います。『可能な限り』というのは、経済的に無理がなく、避ける行動によってストレスを感じない範囲で、というのがいいのではないでしょうか。

『心血管系疾患への影響は過去に考えられていたよりも大きかった』と報告書にも記載されていますし、リスクは確実に存在します。

ただ一方で、トランス脂肪酸の含量が多いものは須く飽和脂肪酸や他の脂肪酸も含んでいて、飽和脂肪酸の過剰摂取による肥満、糖尿病やその他の疾患に対するリスクもまた揺るぎないものです。

よって、トランス脂肪酸だけに目をつけて避けるというのも適切ではないように思いました。

厚労省の調査報告書にもありましたが、トランス脂肪酸だけに限らずバランス良く減らしていくよう心がけるべきかと。

参考:農林水産省、ファクトシート(トランス脂肪酸)https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.fsc.go.jp/sonota/54kai-factsheets-trans.pdf&ved=2ahUKEwimgaOw94DkAhX8yYsBHbSBBckQFjAAegQIBBAB&usg=AOvVaw1qJYXDNkNN7rbsElb_cGeg

食品総合研究所、トランス脂肪酸についてhttp://www.naro.affrc.go.jp/org/nfri/yakudachi/transwg/kagaku.html

資料が少し古いので申し訳ないです。最近の状況について確認でき次第更新します。トランス脂肪酸の残存を減らす加工技術などもあるようです。