仕事を進めるにあたって、今やプロジェクトという考え方は当たり前のものになっています。会社組織に属している人の場合、個人単位で仕事を進めるということは殆どないと言ってもいいのではないでしょうか。
プロジェクトで仕事を進める以上、そのハンドリングは結果を左右する大事な役割です。プロジェクトリーダーだったり、プロジェクトマネージャーと呼ばれる人たちがその任を負います。
この記事では、プロジェクトリーダーの役割や、新任のリーダーが何を考えてプロジェクトに、あるいはメンバーに向き合うべきか、という点について考えてみたいと思います。
「諸先輩方もいるチームの中で、比較的若い層に含まれる自分がリーダーに抜擢された」
「初めてプロジェクトリーダーを任されたが、何をどう頑張ればいいのかわからず不安」
このような方や、
「期待の若手にリーダーを任せてみたが、どうサポートしたらいいものか」
とお悩みの上司の方やプロジェクトメンバーの方の参考になれば幸いです。
はじめに(読み飛ばしてOKです)
この記事を書いている私は、会社でとあるビッグプロジェクトのリーダーを言い渡されました。
「プロジェクトマネジメント」に関するような業務を手掛けたことはなく、これまではどちらかというと専門職という立場で1メンバーとしてプロジェクトに参画することが殆どでした。
そんな私が、プロジェクトを成功に導くためにリーダーとはどうあるべきか、どうふるまい、何を考えるべきか、ということについて何もわからないままリーダーとして仕事を始めました。
リーダーとしての自分を採点するとしたら、100点満点中10点ぐらいです。
全くリーダーは機能していません。実質的に司令塔が不在の状態です。
ですが、周りの優秀かつ経験豊富なメンバーがそれぞれ適切な判断を元に動いてくれて、そのおかげでこれまでチームは前に進んでいる、そんな感じです。
このままではいつかチームはダメになる。それはわかっていました。
そのような状況で、自分は何をしてきたか。
・・・殆ど何もしてきませんでした。
実際、「リーダーとしてのスキルを高めよう」や「プロジェクトを運営するためのノウハウや考え方を学ぶ」といったアクションを殆ど起こしていませんでした。
ですが、いい加減自分がレベルアップしないことには、存在するだけ無駄なリーダーになってしまいます。
何をすればいいのか分かった訳ではないけれど、とにかく少しでも改善のための努力をしていきたいという状況です。
現時点でプロジェクトマネジメントやリーダーシップに関する研修を受けたこともなければ本を読んだこともありません(これから勉強します)。
ですので、100%自分の言葉でプロジェクトリーダーについて書いてみようと思います。
プロジェクトリーダーが心掛けるべきこと
私自身はプロジェクトリーダーとしての神髄を心得ているわけでもないし、何か結果を出したわけでもないので、その正解について語る術を持ちません。
しかし、「こんなプロジェクトリーダーは嫌だ」ということについてはある程度思いつくことがあります。大喜利みたいですが。
これを挙げていき、「そうじゃないリーダー」は少なくともダメなリーダーではないのかも知れないと思ったため、思いつくがままに書いていきます。
こんなプロジェクトリーダーは嫌だ
とりあえず書き出してみる
- 専門知識が薄い
- 情報に疎い
- 指示を出さない
- 指示が曖昧
- プロジェクトをどう進めたいか方針が見えない
- 上の顔ばかり見ている
- 現場の状況を理解していない
- 朝令暮改
- 感情的になる
- 決断を下さない
- 決断が遅い
- 上司の判断を鵜呑みにする
- 判断基準を持たない
- 判断基準が見えない
- 一度伝えたことを覚えていない
- 暗い
- 楽しくなさそうに仕事している
- 碌な発言をしない
- 指示をされるとやる気が下がる
- 自分のために周りを利用しているように見える
本当に思いつくままに書きました。
同じような意味の表現だったり、カテゴリが混ざっていたりと読みにくいリストになってしまいましたが、このままにしておきます。
書いてみて気づいたこと
先ほどのリストを見て、浮かび上がってきたことがあります。
それは、「私自身がどのようなリーダーを欲しているか」です。
まとめると、「情報に敏感」「決断ができる」「メンバーを向いている」の3点かと。
「そうじゃないリーダー」の話をしたのである意味当然なのですが、ポイントは消去法で固めたイメージが意外と具体的なものだったということです。
自分でまとめておいてなんですが、そこまで外れていない気がしました。
十分だとは言えませんが、リーダーとしての大事な要素が抽出できたのではないかと感じています。
早速ですが、これらについて深掘りします。
プロジェクトリーダー心得1:情報に敏感であれ
時に早く、時に深く
これは現場の状況に関することでもありますし、専門知識のアップデートなどについても当てはまります。
最新の情報をインプットしていなければ、その後の判断が二転三転してしまうでしょう。
競争相手がいればその状況も把握しておく必要があると思います。社内でプロジェクトを進めていく上で押さえておくべきキーパーソンは誰か、プロジェクトに関わる社会の変化(法規制etc.)などに敏感である必要もあると思います。
情報に敏感であるために
それでは、情報に敏感であるために何が出来るでしょうか。
今思いついた3つについて、細かく説明します。
常に勉強を欠かさない
プロジェクトに関わる知識であれば、自分の専門分野でなくとも勉強しなければならないと思います(自戒を込めて)。
確かに各部門からエキスパートが集められ、プロジェクトチームは結成されます。しかし専門分野の進捗、判断をエキスパートにおんぶにだっこでは、プロジェクト全体を考慮した判断が出来ません。
いわゆる「部分最適」のような状況になってしまうのではないでしょうか。
大阪府知事、大阪市長を務められた橋下徹さんは、ダム建設に関する判断を下すにあたって関連分野の判断を専門家任せにせず、ご自身の知識が専門家と議論が出来るレベルになるまで猛勉強されたそうです(『実行力』より)。
私自身とある分野での専門知識はありますが、他の分野に無頓着ではいけないと強く感じています。
リアル(Face-to-face)のコミュニケーションを大事にする
この点に関して、私は異なる考えを持っていました。
やや極端ではありますが、「情報が発達した今の時代、直接の会話はあってもいいけど基本不要。連絡はメールで事足りる。電話や直接の会話は相手の時間を奪う行為」というものです。
電話を嫌うホリエモンなどのエピソードを読んで、違和感なくこの考えを受け入れていました。
しかし、必ずしもそうではないかもしれないと感じるキッカケがありました。
当時取り組んでいたとある業務に関して、その実行には社内審査を受け委員会の承認を得る必要があるものがありました。
審査通過には申請書を出してから2週間かかることから、それを見越して準備をしていたのですが、上司が急な出張で不在となり、計画書を詰められず申請書の提出が間に合いませんでした。
仕方なく日程を仕切りなおして計画していたところ「この計画書なら直接持ち込めば何とかなる」と上司。
これまでメールやイントラを通してしか交流のなかった委員会の方を直接訪ね、事情を説明して何とか審査機関を短縮してもらうことに成功しました。
上記の経験から得たことは「直接的なコミュニケーションが有効な人もいる」こと、そして「顔見知り」であることのメリットでした。
上司の場合、この委員会の担当者と旧知の中で、「彼(と自分との関係)なら話を聞いてくれる」と思ったから動けたのであり、実際に業務の計画を崩す必要がなくなりました。
その他にも、喫煙ルームで他部署の人と交流を深め、社内の人事情報に誰よりも詳しい同僚などもいます。やはり会話を基調としたコミュニケーションから得られる情報というものは侮れません。
このように、直接的なコミュニケーションが効いてくる場合もあります。少なくとも顔が分かっている状態でメールのやり取りをすることで、その文面が柔らかいものになるという一面は否定できないと思います。
メールで済むことをわざわざ電話、と言ったことは避けたいですが、肝に銘じておきたいと思いました。
情報を咀嚼し、発信する
「情報」と聞くと仕入れることが全てのようなニュアンスがあると感じています。
ですが、実際には情報は受信するだけでは不十分で、得た情報を咀嚼し、それを自分の言葉にして周りに発信できることがリーダーとしてより大事なのではないかと感じています。
「○○さんがこのようなことを言っていたので、本人に詳しく話を聴いてきて欲しい。」
「このような規則の改定があったが、現段階で何か対策を講じる必要はありません。」
など。『情報+解釈(や次の一手)』を1ターンとするように。
SNSに関しても「情報を得たら、それに自分の解釈を加えて発信しろ。そうすればもっと多くの情報が自分のところに集まってくる」と言われています。
情報を発信するには自分の考えを持っていなければいけないし、アウトプットのためには必死にインプットするようになります。
自分に向けた情報の流れを構築するために、積極的に発信していこうと思いました。
プロジェクトリーダー心得2:決断ができる状態であれ
「決断」はリーダーの最重要任務
リーダーの仕事として一番重要なのは、『何かを決断すること』だと思います。決めることに関連して『示す』ことも同じく重要だと思いますが。
勿論決断の次のステップとして「実行すること」はリーダー失くして動きません。実行プランの作成がなにより重要というのは橋下さんも繰り返し述べられていました。
プロジェクトの方針やその判断基準、何をして、何をしないのか。
そのためには、自分の中に確固たる判断軸を養う必要があると思います。そしてその判断基準は上司や他部門を含めた全体に受け入れられるものであり、かつプロジェクト全体で共有されているとより良いのではないでしょうか。
一方、「上司の顔色をうかがう」のはその対極にある最悪の基準です。これが知れ渡ると、プロジェクトはリーダーを中心として回らなくなります。
「あなたは上司の要望に応えようと必死になることがある」とプロジェクトメンバーの一人に言われたことがあり、以来この点についてよく考えるようになりました。
一人に言われたということは、ほぼ間違いなくその他多くのメンバーも同じことを感じていたということでしょう・・・。反省です。
確固たる判断軸をどう作り、育てていくのか
判断軸を作るために必要なのは、「理由と併せて即決する」普段からのトレーニングではないでしょうか。
「このような理由で、このタスクを中止する」
「この点を重視して、あなたの案を採用する」
というように。
いきなり適当な判断基準を持ち出されても周りは振り回されてしまうかもしれないので、私のように上司がいてリーダーに就く場合、事前にこのような考え方について上司とすり合わせておく必要があると思いました。
プロジェクトリーダー心得3:メンバーを向いて仕事しろ
メンバーを向くことは近視眼的か
リーダーがどこを向いて動くのかという点は、恐らくプロジェクトチームとその仕事のスケールを規定するような気がしています。
目の前の小さな成果を目指すだけのリーダーに、多くのユーザーを満足させるサービスを生み出せるとは思えません。
プロジェクトにおけるビジョンという言葉で語られるこの「どっちを向くか」問題ですが、「メンバーを向く」ことは決して小さな問題ではありません。
私は常に大きなビジョンを掲げる一方で、常に後ろを振り返ることがリーダーとして大事な心配りだと感じています。
リーダーとしてある程度の権限を持って仕事をする以上、指示には従ってもらわなければいけません。時には本人の希望や意見と異なる業務をお願いすることもあるでしょう。
そこで自分の指示に対してどのような反応を示すのか?あるいは異論をぶつけられたときに、ビジョン(理想の姿)を元にした説明をするのか。理想が素晴らしいものならば何を指示してもいいのか。
それは違うと思います。
私は、メンバーにも快く仕事をしてほしいと思っているし、つらい決断であっても可能な限り現場一人ひとりの状況を理解した上で話が出来るリーダーでありたいと思っています。
メンバーを向くために
これを可能にするためには、日常からの地道なコミュニケーションが重要だと思っています。
また、発信にも繋がりますが、自分はこのような考え方を持っている、ということを曝け出していくことが今後重要かと感じています。
プロジェクト自体は金額的には大きいですが、携わる人数は数十人。まだ一人ひとりの顔を見て仕事が出来る規模です。
まだ見ぬ新プロダクトのユーザーを見ることも大事ですが、私の思いだけが突っ走っても息切れします。
Fast alone, far together
チームが同じビジョンを描いて走れるように、僕は後ろを振り返るリーダーでいたいです。
プロジェクトリーダーとしての心得まとめ
この記事では、プロジェクトリーダーとして大事な要素は何か、ということについて、消去法的にその項目をピックアップしました。
その結果、「情報に敏感」「決断ができる」「メンバーを向いている」の3点が私が思うプロジェクトリーダーとしての重要な点であることが浮かび上がりました。
情報に敏感であるためには「専門外の知識を勉強する」「Face-to-faceで交流する」「情報を発信する」ことの重要性を改めて認識しました。
また、決断をするためには「確固たる判断軸を作る」こと、また私のように上司がいる場合は事前の擦り合わせが有効である可能性を確認しました。
最後にメンバーを向くことの重要性ですが、壮大なビジョンを掲げるだけではチームは動かないこと。また私の描く理想のリーダー像として、「常に後ろを振り返るリーダーでいたい」との想いを新たにしました。
リーダーシップの型というのはいくつか種類があるらしく、それぞれに有効なスキルについても違いがあるようです。この辺りも追々学んでいきたいです。
理想のリーダー像はそれぞれあると思います。
この記事が理想のプロジェクト運営の参考になれば幸いです。