円形脱毛症は治る?治らない?予後について

『円形脱毛症になってしまった。これって放っておいても治るの?』

『円形脱毛症の治癒率、予後について知りたい』

この記事では、上記のような疑問に答えます。

円形脱毛症は治るか?:結論

円形脱毛症は、自然治癒(何も治療しなくても元通りになる)の可能性も十分にあります。

ですが、脱毛の起こる範囲や数、大きさなどによってその後たどる経過も大きく異なります。全体をおしなべて考えると、「放置してても大丈夫」と言い切れる自然治癒率ではないと言えそうです。

「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」を参考に、円形脱毛症の予後に関する知見をまとめました。

円形脱毛症は治るか?:症状別に確認

軽度の場合

症状が最も軽度な方の場合、80%程度の回復が期待できそうです。

ガイドラインには、『アトピー性疾患や内分泌疾患の既往のない、個々の 脱毛巣の最長存続時間が1年以内である少数の脱毛斑の場合、80%程度の患者において1年以内に毛髪が回 復することが本邦で報告されている。しかしながら、再発する例も多い』とありました。

(Ikeda T. Dermatologica, 1965; 131: 421―445.)

確かに僕も最初の脱毛巣は1つのみ、大きさも100円玉程度のもので、3~4か月ぐらい経過した時点で元に戻りました。その点では運よく80%に入ったのかも知れません。ですがそのおよそ4年後に再発(間隔が空いているので「再発」と言えるのかわかりませんが)し、現在は全頭性に進行してしまいました。

欧米の報告及び17年間の観察結果

日本国内のデータだけでなく、国外の知見も十分参考になります。円形脱毛症は性別、人種による発症率や病状の差がないと言われているからです。

『欧米の複数の施設の報告から は,34%~50%の患者は1年以内に毛髪が回復するが, 14%~25%は全頭型や汎発型へ移行し,その場合には 回復率は10%以下と考えられている』

(Messenger AG, et.al. Br J Dermatol , 2012; 166: 916―926. )

この報告によると、2~3人に1人の割合では1年以内に回復するが、4~7人に1人の割合で病状が進行してしまうとのことです。

また、以下の論文では脱毛面積によって患者を層別化し、予後について考察しています。

『17年間にわたり経過を観察した報告によると,成人では脱毛面積が 25%未満の場合68%が,50%未満の場合には32%が回復するが,より広範囲の脱毛面積の場合は回復率はわずか8%であった』

(Tosti A, et.al. J Am Acad Dermatol , 2006; 55: 438―441.)

脱毛面積が25%というのもかなり目立つぐらい広い範囲だとは思いますが、それでも3人のうち2人は回復が期待できるとのことです。50%を超えるとその後の自然治癒はだいぶ難しいと考えていいのではないでしょうか。

若年での発症例について

15歳以下での発症についても、円形脱毛症の症状は進行しやすいという傾向があるようです。ガイドラインには『回復率が低い』と記載されています(De Waard-van der Spek FB, et.al. Clin Exp Dermatol , 1989; 14: 429―433. 38)。

アトピー性皮膚炎との合併による影響について

アトピー性皮膚炎は円形脱毛症の発症に影響することが強く示唆されています。組織学的な検討で毛包組織へのリンパ球の浸潤がアトピー性皮膚炎合併例で多いことが報告されています。また円形脱毛症の重症例にはアトピー性皮膚炎の合併例が多いそうです。

しかしながら、予後に関して考察した研究によると、アトピー性皮膚炎の影響については相反する報告がなされており現時点では結論付けられていないようです。

(Sharma VK, et.al. Int J Dermatol , 1996; 35: 22―27. 39)

予後良好な病型もある

病状の進行は早いがその後の回復も速やかで、短期的には予後良好な病型も近年報告されているそうです。ガイドラインには『ダーモスコピーによる軟毛の回復所見が重要』とあります。

(Sato-Kawamura M, et.al. Dermatology , 2002: 205: 367―373. 40) (Uchiyama M, et.al. J Am Acad Dermatol , 2012: 67: 1163―1173.)

まとめ

ガイドラインには以下のように記載されています。自分の状態を見極めることが重要で、「発症後1年」というのが重要なラインのようです。

『単発型あるいは少数の脱毛斑(数個程度)の症例の場合,発症後1年以内は経過を観察するだけでもよい.また経過の長い全頭型や汎発型の場合,治療を断念しかつら等を使用するよう勧めるという選択も妥当な対応といえる』

治療の介入は早ければ早いほどいいということもありますので、速やかに専門医に相談されることをおススメします。